ベルリンから人生敗者復活戦。

ワーキングホリデーの失敗談を綴る。その失敗の過程と、失敗から出直す、敗者復活戦の過程も勝手に配信する。

7月15日 日本公開! 「ダンサー、セルゲイ・ポールニン 〜世界一優雅な野獣〜」カリスマバレエダンサーの栄光と苦悩、誰が為に踊るのか?

久しぶりの映画の話題です!実はずっとこの映画をオススメしたかった!

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平成元年生まれの天才バレエダンサー、セルゲイ・ポールニン

セルゲイ・ポールニンという、同年代に生を受けたことを感謝したくなる稀代のバレエダンサーがいます。ウクライナ出身の若干28歳、彼の半生を描いたドキュメンタリー映画「DANCER ダンサー」が日本では7月15日から公開されています。まだ記憶に新しい話題作「La La Land」を抑えてアカデミー作品賞を獲った「MOON LIGHT ムーンライト」よりも素晴らしい映画です。この映画を観てしまうと、どんな素晴らしい映画も霞んでしまう。ドキュメンタリーという実話、そして本人を追った実録を前にすると、フィクションは敵わないのかもしれないと思わされます。今後ドキュメンタリー映画がもっと見たくなる、そんな映画をご紹介しましょう。

 

まずは有無を言わず、映画の予告編をご覧下さい。

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彼こそカリスマ、圧倒的な才能と苦悩。

引き込まれる妖艶な瞳、無邪気な子供のような笑顔とのギャップのある神がかった踊り。バレエがまだお金持ちの子女がするスポーツ」と思われがちな日本では、セルゲイ・ポールニンという名を知っている人は多くはないと思いますが、この予告編を見ただけで彼のことをもっと知りたいと思った人は多いことでしょう。何よりもジャンプが高い。バレエの知識がなくとも、彼が特別であることは誰の目にも明らかではないでしょうか。

予告編でも触れていますが、彼の経歴は文章にしただけでも衝撃的です。ウクライナの小さな街で生まれ育った少年は、10歳で母と共に故郷を離れ、バレエ人生をスタートさせます。若干19歳にして、史上最速、最年少でロンドン ロイヤル・バレエ団のプリンシパルに選出され、圧倒的な存在感とカリスマで人気の絶頂に上り詰めました。全てが順調であるかのように見えた矢先、セルゲイはその華やかなキャリアを僅か3年で手放してしまいます。スターの突然の退団、「Talented, but trouble. (才能はあるが、トラブルメーカーだ)」と称された彼の数々の行動は、バレエ界に衝撃を与えました。

なぜ彼は突然バレエ界を去ってしまったのか?何故彼はまたダンサーとして再びステージに戻ってきたのか?あまり語られることのなかった彼の生い立ちをドキュメンタリーとして追体験することで、バレエダンサーとしての苦悩、葛藤と凄まじい覚悟を知ることができます。

 

バレエだけが希望であった少年時代と家族の絆。

映画で描かれていた彼の生い立ちと苦悩、葛藤と覚悟について少し書きたいと思います。ネタバレを嫌う方であっても、これからの文章を読んだところで映画の良さは一切落ちないし、むしろより強く映画が見たくなるだけだと思いますのでご安心下さいませ。

まず彼のバレエ人生は器械体操からスタートします。幼い頃に始めた器械体操で才能を開花させると、母親の直感からバレエにその才能を転向しました。まさに蒙古の母を地で行くお母様の教育方針により、ウクライナの小さな街では才能が埋もれてしまうと危惧されたことから、母親と共に首都キエフへと拠点を移し、より厳しい環境に身を置くこととなります。首都での生活、バレエ教育にかかる費用を捻出する為にも父親はポルトガルに出稼ぎに行き、祖母まで仕事に出るなど家族全員がバラバラの街へと散らばりました。全てはセルゲイのバレエの為。まだ10歳であったセルゲイも、自分の為に家族が離れ離れになってしまったと思い、バレエでの成功だけが家族を再び取り戻す道であると、更に身を粉にして稽古に励みました。遂にはウクライナの首都キエフを離れ、より高度な環境を求めてロンドンへと渡ります。今回はビザの関係により、ロンドンに母親は留まることは出来ません。最後は母親からも離れ、英語が話せないままのセルゲイは一人で世界トップクラスのバレエ団で鍛練を積むこととなります。家族の想い、苦労を全ては無駄にしない為にもセルゲイは異国の地で懸命にバレエを学びました。常に他の生徒よりも多くのクラスを取っていたといいます。

しかし15歳のある日、セルゲイは両親の離婚の知らせを受けました。彼が取り戻そうとしていた家族は、悲しくも再び結びつくことは叶わなくなったんです。踊る理由を失い、悲しみの最中にあっても、彼は人生の全てをバレエに捧げてきました。そのままトップダンサーへの道を駆け上った時、彼は何を想ったのでしょう。わずか三年でトップバレエ団のプリンシパルの地位を降りた天才の、苦悩と覚悟を伺い知ることができる映画です。そしてバレエ団を去った後、再び世界にその名を知らしめる一本の動画配信。彼は誰の為に踊るのでしょうか?

 

それでも踊り続ける。誰のために踊るのか。

ロンドンのバレエ団を去った後も、ロシア、モスクワに拠点を移し活動は続けてきたセルゲイ。Hozer "Take me to Church"を踊る彼の気持ち、考えを推測してみると彼がそれでも踊らずにはいられない宿命づけられたかのような情熱を感じますね。

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最後にHozer の"Take me to Church"を踊った話題の映像をご覧下さい。ハワイの奥地で撮影されたという映像はインターネットで配信されると同時に爆発的な再生数を記録し、そのままセルゲイ・ポールニンの名を再び世界に知らしめました。現在の彼はトランプ政権発足後に作られた「Make Love, Not wall (壁じゃなくて愛を作ろう、愛し合おう)」をテーマにしたGAPのプロモーションにダンサーとして参加したり、バレエ界を超えたダンサーとして再び活躍の場を広げています。そこでは全身に刻み込んだタトゥーを隠すことなく、ありのままの姿で踊っています。

 

血肉の通った美しいバレエ人形は、その血肉を沸騰させて、蒸発するまで踊りました。

願わくは、「イケメン」と言う言葉で容姿のみを切り取って熱愛する芸能文化がある日本においても、彼の尋常ではない熱を込めた踊りが評価され、美しい人形ではなく血肉の通ったダンサーとして受け入れられんことを。この映画が、日本各地で人知れず頑張り続ける全てのアーティストの励みとなりますように。そしてセルゲイ・ポールニンのますますの活躍を願って。