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ベルリンから人生敗者復活戦。

ワーキングホリデーの失敗談を綴る。その失敗の過程と、失敗から出直す、敗者復活戦の過程も勝手に配信する。

日本劇場未公開映画 隠れた名作、アイルランド映画を紹介。【Inside I’m dancing /ダンシング・インサイド 明日を生きる】

2004年公開のアイルランド映画。日本では劇場公開されなかった映画なのでご存知の方は限られているかもしれませんが、ものすごく素晴らしい映画だったので、是非ともご紹介させて下さい。(英語の予告編ですが、雰囲気は伝わるかと!※雑!)

 

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【STORY

小児麻痺で身体を動かすことも会話をすることも不自由な青年マイケルは、車椅子に座り、職員に世話を焼かれ、毎日を施設のスケジュールに沿って暮らしていただけ。面会に来る家族もなく、一日をただそこで過ごすだけの人生に、疑問を感じることもないほど外の世界と隔離されたまま生きてきました。そこに金髪に染めた髪をワックスで逆立てたヤンチャな青年ローリーが施設に入所してきます。彼は汚い言葉を使い、施設のルールに背き、マイケルを外の世界に連れ出してくれました。初めてのお酒に女の子との遊び、マイケルは外の世界に目を輝かせ、まるでローリーはヒーローそのもの。二人は協力し、不自由な施設を離れ、二人だけの生活をスタートさせることに成功。そして介護者として金髪で巨乳の可愛い女の子シボーンをスカウトし、3人で楽しい日々を過ごしていましたが、そんな日々は長くは続きません。シボーンに恋心を抱き、複雑な想いを抱え始めるマイケル。ローリーの自由奔放さに我慢出来なくなるシボーン。外の世界で自由を謳歌するようで、どこか影があるローリー。ゆっくりと3人の生活の歯車は狂って行き・・・という、話です。

 

早速脱線 「ベルリンの図書館ってDVDが豊富なんですよ!」

ベルリンで通い詰めている図書館はDVDが豊富にあって、常に家には5−7枚の映画を借りてきています。気分に合わせられるように様々なジャンルを借りておくのが常で、大体は⑴語学学習用の日本かディズニーのアニメ作品 ⑵語学学習用の鑑賞済みのハリウッド映画 ⑶まだ見たことがない興味があった映画 ⑷パッケージのみで選ぶ『今まで誰からも紹介されたこともなく、映画雑誌などでも聞いたことがない』日本未公開か、日本ではあまり話題にならなかった映画、この4パターンにわかれます。今回は⑷パッケージのみで選んだ作品で、事前の作品情報は皆無。どんな映画かは分からないまま鑑賞しました。

 

知らない映画は、まさに「ジャケ買い!」※買ってないけども。

パッケージには『ビリー・エリオットの製作陣が再集結』とありました。私の好きな映画の一つだったので、この作品が良さそうなのは確かです。また『エディンバラ国際映画祭 観客賞受賞』ともあります。観客賞ということは、技術うんぬんはともかく、シンプルに映画として観る人の心に響いた作品だと思いました。私は技術的なことは分からないので、観客賞を取った作品には「きっと何かがあるのだろう」とある程度の信頼をおいて手に取ることが出来ます。

 

ここから先は「話が長い人」の本領発揮で無駄に長いよ。。。

この先は鑑賞したことがない方には多少ネタバレにもなってしまうので、ネタバレが気になる方は読まない方が良いかもしれません。でも、どれぐらい感激したか、映画の魅力を確かめてからyoutubeなりiTuneなどで映画を探されたい方には一個人としての感想をシェアしたいなと思います。

 

勝手な解釈「トレインスポッティング」×「ONCEダブリンの街角で」

前置きが大変長くなりましたが、この映画を別の映画で表現すると「トレインスポッティング」的なカッコいい男の子と女の子が出てくるボーイ・ミーツ・ガールなストーリーで「ONCEダブリンの街角で」みたいに救いがないけども、小さく心に光がともって、それでも現実に向き合って生きて行く勇気を与えられる映画です。見所は沢山あるのですが、この映画は2回観ることで1度目とは違う人物に感情移入して鑑賞することが出来る、という点が素晴らしいと思います。

 

最初はマイケルの視点で鑑賞「ハチャメチャなジェットコースターだ」

1度目の鑑賞で観客は、ヤンチャなローリーに振り回されながらも新しい世界に触れて行く寡黙な青年マイケルの視点で物語を見て行くことになるでしょう。

初めて女の子と飲むお酒に、煌びやかなクラブ。施設のルールを破るという初めての反抗。生まれてからずっと世界の全てであった施設を離れ、アパートで送る自由な生活。食べたい物を食べて飲みたい物を飲んで、大好きな友人と優しい介護者のシボーンさえ居れば幸せな日々。でもローリーは自分勝手な行動を続けてシボーンを困らせるし、優しく介護してくれる美人なシボーンのことが気になって仕方がない。彼女に想いを募らせるほど、自分が不自由な障碍者であることを痛感し、苦悩するマイケル。守られていた施設の外の世界に出ることは自由でもあり、またそのままリアルな世界へと向き合う厳しさとも同義でした。大好きなシボーンと踊れない自分、彼女の恋人にはなれないことを痛感する時、初めて障碍者として生きる苦しさを実感するマイケル。雨の中家を飛び出したマイケルを追いかけるローリーとのシーンは名場面でした。その時の橋の上で交わした二人の会話は切なくも、ユーモアに溢れています。「自殺したくても、橋の柵が高すぎてバリアフリーじゃないから飛び込んで死ねないや。障碍者への配慮が足りないって苦情書かなきゃ。」辛いことも二人で笑って跳ね返して行く。苦しくても、それでも生きて行くというマイケルの人間としての強さと、決意に胸を打たれました。

マイケルは本当にローリーが大好きで「本当にアイツって自分勝手だよね」とシボーンが言っても「彼は最高だよ」と即答しています。シボーンへの恋心を相談して「録音して自分の呻きのような声を聞いてみろ。鏡で自分の不格好な姿を見てみろよ。」と暴言を吐かれても、その現実自体に心を打ち砕かれても、発言者のローリー自体に腹を立てていることはありませんでした。マイケルにとってローリーは生きて行くパワーそのもので、自分に恋心と失恋すら経験させてくれた恩人でもあるのです。どんなに辛い経験も、ローリーとの生活さえあれば乗り越えて行けると思っていたのでした。そんな時に訪れた、ローリーとの別れ。あんなに元気に見えたローリーは、実は寿命が近いことを悟っていたのです。彼は最後のあがきとして自由な生活を求め、自由な生き方を体現しようとしていたのでした。そこに幸か不幸か巻き込まれたマイケルは、その後もローリーの居ないアパートで、それでも一人で生きて行くのですが、ローリーもシボーンも居ない生活を歩き出す彼の表情はそれでもどこか晴れやかで、誰かの指示に従って生きていた過去の自分は消え、本当の意味で一個人の独立した人間として生きて行く、未来のマイケルの姿がありました。

 

もう一度見返したくなる映画。そして分かる、ローリーの真意。

そして再度鑑賞する時、観客はローリーに感情移入することでしょう。ローリーの最後を知っている観客は、今回は彼の自由奔放な行動や発言が何を意味しているのかを知っています。個人での独立した生活の申請を却下された時の「半年も待っていたら死んじゃうよ!」という発言は、我が侭を主張しているのではなく、そのまま残りの人生が半年も持たないであろうことを自覚していたからこその憤りの言葉だったのだと分かります。女の子を誘ったり、ナンパしたりしてもどこか余裕があるローリーは、実は余裕があるのではなく障碍者として恋愛をすることの難しさと、先のない未来を既に知っているからこそシボーンとも距離のある関係を保っていたのです。ローリーだってシボーンに想いを寄せていたことを、観客は橋の上での会話で既に知っているので、彼のシボーンへの押さえた、でも時折向ける想いの籠った目線には切なくなりますね。キラキラした目で新しい世界を見つめるマイケルに、ローリーは何度か「お前にはギフトがある」「未来って言うギフトだよ」とその後も生き続けて行く人生について語ることがありますが、最初の鑑賞では「会話も出来て、顔もカッコいいイケメンのローリーにそんなこと言われてもマイケルが不憫」と思ってしまい、あまり心にグッと来ませんでした。でも2回目の鑑賞では寿命を悟っていた彼からのマイケルへの激励の言葉であったと分かっているので、改めて胸に刺さるのです。自分には与えられていない物を与えられている人に、どれだけ寛容になり、その人の為に行動出来るか。ローリーは聖人君子ではありませんし、自分の生活の為にマイケルを利用した部分もあったかもしれませんが、彼が純粋に窮屈な施設での生活から抜け出して行こう、アイツも一緒に連れて行くんだ!と思った、その時点でローリーはマイケルに最大限のギフトを与えていると思いますし、ローリーは死してもなお、マイケルの中で生き続けると思えました。だからこその希望の表情が、最後にマイケルから見て取れたのかもしれません。

 

勝手な解釈その2 「役者さんも良いし、もうタイトルまで褒めちゃう」

タイトルのInside I’m dancingも良いですね。不自由な身体で、存分に生を全うして行こう、という想いが伝わってきます。そして役者さんもとても素晴らしく、マイケル役のスティーブン・ロパートソンの演技は本当に障害があるかのようなリアルさで、「ギルバート・グレイプ」でー役を演じて絶賛されたレオナルド・デカプリオの演技を思い出しました。ローリー役のジェームズ・マカヴォイは第一にイケメン。第二にもイケメン、と言いたいのですが、その生き様がカッコ良くてイケメンに磨きがかかっている演技でした。この人、こんなパンクな役柄を若い頃に経験されていたんですね。Wantedでアンジェリーナ・ジョリーと共演している時もすごく若く見えたけれど。巨乳で美人のシボーン役のロモーラ・ガライは、大きな目と肉厚な唇から何度も「KICK ASSで有名になったクロエ・グレース・モレッツちゃんじゃないの?」と見間違えましたが別人でした。

 

今後も図書館で「パッケージで発掘する日本未公開作品」を探してみては、(当たり外れももちろんあるんですけど、)良いなと思った作品は紹介していきたいと思います。実は他にも何作か良いものを発掘したのですが、気分が乗らずに文章にしておらず、ちょっともったいなかったかな。時間がある時に他の映画もまとめて行きたいですね。(映画ばっかりです。)